建設業
多様なバックグラウンドを持つ人材が活躍できる組織づくりを人財CuBe の柔軟なカスタマイズで支援

東急グループとして、オフィスビルや商業・公共施設等の建築工事、鉄道、インフラ整備等の土木工事を幅広く手がける総合建設会社。同社では、2003年に人財CuBeの目標管理・人事評価システム(以下「e-Challengeシステム」と呼ぶ)を導入。今回は、国際事業部 事業管理部長 石藤 昭徳様、管理本部 人事部 人事・労政グループリーダー 太田 喜剛様、同部 同グループ 平林 滋道様に、2022 年度に行われた人事制度改定の概要と制度を定着させるための取り組みについてお話を伺いました。
※記載の所属・役職は現在のものです。取材時点では以下の通りです。
石藤様:管理本部 人事部 人事企画グループ グループリーダー
太田様:管理本部 人事部 人事・労政グループ 参事
平林様:管理本部 人事部 人事・労政グループ
【東急建設株式会社について】
東急グループの総合建設会社として基軸事業である土木事業と建築事業を中心に展開。多摩田園都市をはじめとした渋谷や東急沿線の都市開発の実績と都市機能を止めずに行う工事の技術とノウハウを活かし、「都市を建設するゼネコン」として今後は新たな戦略事業に不動産事業、国際事業などを加え、競争力拡大・収益多様化に取り組んでいる。
東急グループの新たな企業ビジョン
― 人事制度改定に至った経緯をお聞かせください。
東急グループが2021年3月に新たな企業ビジョンとして掲げた「VISION2030」が起点です。「VISION2030」では重要性が増しているSDGsを事業機会と捉え、3つの提供価値「脱炭素」「廃棄物ゼロ」「防災・減災」を定めました。この提供価値を軸に「人材」と「デジタル技術」を競争優位の源泉として高め、新規事業へのチャレンジを推進していきます。
新規事業を成功させるために必要なのがイノベーションの創出です。若手の抜擢や外部から高度な専門知識を持った人材を獲得するなど、人事面で新たなアプローチが必要になり、バックグラウンドが多様な人材が活躍できる組織づくりが求められました。そこで掲げたのが、以下3つの重点施策です。
① 求める人材・行動への意識付けによる意識変革・エンゲージメント向上
②若手の早期抜擢とシニア世代の活躍
③ダイバーシティ&インクルージョンの実践
新人事評価制度の改定

国際事業部 事業管理部長 石藤 昭徳様
― 3つの重点施策に基づいて、人事評価制度の具体的にどのように見直しされたのでしょうか。
これらの重点施策を念頭に、経営陣とプロジェクトメンバーとで議論を重ね、制度の具体化を検討してきました。その中でも大きく変えた点は次の通りです。
<等級とコースの改定>
職能等級と職務等級を平行運用することが、今回の人事制度改定の大きな柱でした。
制度改定前は、役割が上がれば等級も上がる、「職能等級/役割等級制度」を導入していました。建設会社は知識やスキル・経験の積み重ねをないがしろにできないため、役職者の登用に関しては一定以上の等級が必要でした。改定後は、能力部分の職能等級とその時々の役割の大きさで職務等級が付与され、このセットで処遇が決定される制度としました。これにより、職能等級に左右されることなく、若手を役職者に抜擢しやすい人事制度になっています。職務等級は、組織管理職、作業所長、専門職の3つの職種で構成されており、当社の利益の源泉になるような立場や専門性の高い人材を正当に処遇できる仕組みにしています。
等級と並行して、コースの改定も行いました。これまでは総合職、一般職の2つのベースと60歳以降に転換する専任職という3つのコースで管理していました。改定後は新たに“エリア総合職”というコースを設けました。専任職では、仕事がスケールダウンする働き方でしたが、会社としては、経験やノウハウが豊富なシニア人材にもっと活躍してほしいという想いがあったため、定年という概念を無くし、60歳以降もコースを維持できるようにしました。
<評価方法を絶対評価へ>
評価体系は、「成果評価」と「能力評価」を実施しています。
年度目標の達成度や組織の貢献度に対しての評価について、一般的には業績評価と言うことが多いですが、当社は成果評価と言い、職能等級定義に規定された職務遂行能力の発揮度に対しての評価を能力評価としています。成果評価の結果は賞与に反映させ、能力評価の結果は昇給・昇格に反映させて切り分けてきれいにしています。
制度改定前は、成果評価と能力評価を等級に応じて比率で按分し総合化をしておりました。このことにより、一時的な成果の良し悪しが昇給/昇格にも影響を及ぼしてしまうなど、被評価者の納得性を下げる一因になっておりました。
また、被評価者の納得性を高めるため、評価の方法を絶対評価に改めました。元々絶対評価をしたいというところは以前の制度でも目指しているところでしたが、評価が上振れをしてしまっていて、やむなく平均点を調整してバランスを取っていました。
そこで今回の制度改定では、定義に基いた絶対評価をやりきることにしました。さらに、目標管理の振り返りと併せて四半期ごとに中間面談を行う仕組みに変更しました。これらの改定にともない、問われるのが評価結果の妥当性です。そこで、評価結果をしっかり精査するため、評価会議の重要性が増しました。我々人事部も評価会議に積極的に関与し、運用の強化を図っています。
新人事評価制度の運用見直し
― 新人事評価制度の運用ではどのような見直しをされたかお聞かせください。
前段でお話しした成果評価と能力評価の運用を次の通り運用を見直しました。
<成果評価を賞与に反映させる仕組み>
成果評価の結果は賞与に反映という話をしましたが、賞与原資を各部門に割り当て、それを評価で振り分ける仕組みを「e-Challenge」に実装しました。運用見直し前、評価確定後に賞与配分を決定するための分布調整とそれによる評価変更が行われていました。しかし、評価結果の納得感の低下が見られたため、部門間での処遇決定のための調整をなくし、部門に配分された原資ポイントを部門内で配分する仕組みにしました。
<評価結果の目線合わせをサポート>
絶対評価において、1人の評価者だけの判断では本当に正しいとは断言できません。そのために評価会議を開催し、各部門・各立場の目線合わせを行います。その際、被評価者の評価結果を一覧で表示できる機能をe-Challengeに設けました。わざわざ資料をつくる必要がないため、評価会議の準備にかける工数を大幅に削減することができました。
<成果評価のマトリックス表示>
“職務等級なし”の成果評価は成果・効率性に加え、加点要素として創意工夫・チャレンジ、所管業務外対応の項目で組織チーム業績への貢献度を評価します。業務の難易度・業務品質を踏まえ、マトリックスとして分かりやすく点数表示されるため、被評価者の納得度を高めることができます。
パッケージ化された人事考課システムでは「やりたいことが実現できない」

管理本部 人事部 人事・労政グループリーダー 太田 喜剛様
― 大幅な人事制度改定をきっかけに、既存システムの見直しを行う企業は多く、昨今では特に新たなHRTech も数多く存在する中で、2022年度の人事制度改定の際、他の製品を検討されなかったのでしょうか。
今回は他社製品の比較・検討はしていませんが、2017年度の大幅な人事制度改定の際、人事考課システムの比較・検討を行いました。そのときに分かったのは、人事制度や評価制度は企業の思想が色濃く反映されるため、システムに合わせる必要があるパッケージ化された人事考課システムは「やりたいことが実現できない」ということです。
その点、2003年から利用しているBNCさんの「e-Challenge」は、我々の人事制度に合わせて柔軟なカスタマイズを行ってきました。そのため「e-Challenge」を改修することが一番の近道だと考えました。また、BNCさんの手厚いサポートも決め手でした。それらを踏まえ、2022年度の人事制度改定も「e-Challenge」の改修で対応した次第です。
それぞれに特化したシステムを組み合わせて使っていく方が、柔軟性があって切り替えもしやすいのではないかと考えています。

管理本部 人事部 人事・労政グループ 平林 滋道様
― 人事考課システムの運用に悩む企業の人事部門に向けてメッセージをお願いします。
今回人事制度を刷新するにあたり、“目的を整理すること”が重要だと思いました。
目的からの制度整備、運用課題が各部門から意見をもらえていたので、何をしなければいけないのか目的がはっきりしていたのが一つの成果です。我々人事担当もユーザとして評価会議に出席して「e-Challenge」の使い勝手の意見を日頃からもらっているので、制度上の課題やユーザからの声をシステム上でうまく表現してうまくいっている部分がありました。
人事関連のシステムを一つに統合したいと考える企業様もいらっしゃるかと思いますが、現実的には難しいようです。実際、途中で頓挫してしまうという話を耳にすることがあります。当社は「e-Challenge」のほか、いくつかのクラウドサービスを併用し、連携させながら運用していますが、とく大きな問題などは発生していません。それぞれに特化したシステムを組み合わせて使っていく方が、柔軟性があって切り替えもしやすいのではないかと考えています。
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