卸売業
最先端へと変化し続ける人事制度に併走する人事評価システム
人事総務部 HR戦略第二室 池上様、横山様、井上様に人事評価制度の概要と新たな取り組み、そして人事評価ワークフローシステムについて伺いました。
【三井物産株式会社について】
1947年7月設立の三井グループ大手総合商社。
金属資源、エネルギー、プロジェクト、モビリティ、化学品、鉄鋼製品、食料、流通事業、ウェルネス事業、ICT事業、コーポレートディベロップメントの各分野において、全世界に広がる営業拠点とネットワーク、情報力などを活かし、多種多様な商品販売とそれを支えるロジスティクス、ファイナンス、さらには国際的なプロジェクト案件の構築など、各種事業を多角的に展開している。
人事評価制度の概要と最近の改定の背景
― 貴社の人事評価制度についてお聞かせください。
当社の人事評価制度は、「個人能力評価」「貢献度評価」の二つで構成されています。
個人能力評価は発揮された個人の能力を評価する制度であり、直近3年間の累積評価点数を昇降級や給与に反映します。単年度でなく3年間の累積点数を用いることで一過性の要素を排除し、社員の成長度合いを反映した昇降級につなげています。貢献度評価は、組織に対して個人が付加した価値・貢献度の大きさ、難易度の高い目標達成への挑戦度合いを評価し、賞与に反映する制度です。この二つの人事評価制度は、当社の人事制度の根幹となるもので長年運用を続けています。
評価対象者は、海外拠点を含めた約5,500人になります。
当社は2021年に多様な「個」の活躍を支えるために、大きく新たな2つの制度を導入しました。
1つ目は、キャリアチャレンジ制度ですが、上位等級に区分される業務に早期にチャレンジできる制度です。やる気や成長意欲と能力のある社員へのチャレンジ機会を設け、実力が認められれば従来よりも早く上の等級に昇格できるようにしました。実際に入社5年目の20代後半で、自ら企画し案件を進めていった結果、関係会社の社長になる社員が誕生しました。
次に2つ目のExpertバンド制度ですが、高度な専門性で貢献している社員の新しい等級制度です。これまではマネジメント職に就くことが唯一の昇格ルートでしたが、組織を率いるだけでなく、高い専門性で会社に貢献している社員も存在します。そういった活躍の仕方も多様な「個」の一つとして認め、柔軟に評価・処遇するため、新たな等級として設けたのが“Expertバンド”です。専門性を評価するKPIの貢献度合いが高ければ、部長クラス以上の処遇も可能になります。
人材育成の基盤となるシステム構築
― 人事評価制度の運用を担うシステムについてお聞かせください。
2010年に、大企業向けに実績のあるビジネスネットコーポレーション(以下、BNC)の『人財CuBe(目標管理・人事考課システム)』を導入しました。当社では「人事評価ワークフローシステム」と呼んでいます。導入以来、現在に至るまで大小の人事評価制度改定がありましたが、毎年運用の改善を図り、ブラッシュアップも行っております。様々な役職にある全社員が使用しているシステムですので、細かい拘りや要望が出てきますが、BNCのスピーディなきめ細かい対応が本当に助かっています。制度変更や現場ニーズに寄り添ってシステムが併走してくれるのは有り難いですね。
また、当社では人材育成と適所適材の人材配置を行うために、年1回「人材開発・活用調査」を行っております。社員の今までの職務経験やこれからのキャリア志向を申告してもらっています。その業務を、2015年に、BNCの『人財CuBe(自己申告・キャリアプランシステム)』で構築しました。
この2つのシステムは、現場での人材育成の基盤になっており、全社員がユーザーとして当たり前のように活用しているシステムです。そういう意味では、当社になくてはならないシステムと言えます。
納得性向上のための新たな施策
― 最近改善した取り組みがあればお聞かせください。
以前から、中間・期末だけで評価されてしまうのは問題があると感じていました。その根底にあるのは評価者と被評価者における認識のギャップです。コミュニケーションの頻度が少なければ評価者から見える部分がわずかなため、年間のある一部しか評価の対象にならない可能性があります。そうなると、被評価者の納得度は低下してしまいます。
特にコロナ禍以降、リモートワークや時差出勤などの増加により、評価者と被評価者が場所と時間を共有して働くケースが減少し、どういう仕事をしているのか判断できない状況が散見されるようになってきました。被評価者からの発信がないと評価者は評価の材料がありません。目に見える形でログを残していかなければ、評価者と被評価者の認識のズレはますます大きくなり、取返しのつかない状況になってしまうと危惧しました。
また本人自身も第1四半期、第2四半期に行動した内容を期末に忘れてしまうことがあるので、頻度高く発信し、思っていることを言語化することが本人にとっても重要なことだと思い、2021年7月から『進捗レビュー』という施策の導入に至りました。
『進捗レビュー』とは、期初に立てた目標に対しての進捗状況や能力発揮状況を、少なくとも四半期に1度は部下から上司に報告しコミュニケーション頻度を上げると共に社員の目標達成や成長を後押しする為の施策です。
施策を導入するにあたり、どのように社員に浸透定着させるかが課題となり、人事評価ワークフローシステムでお世話になっているBNCにお声がけいたしました。
あくまで施策の目的はコミュニケーションの活性化ですので、面倒なツールを導入して「やらされ感」が出てしまうのは避けたいので「T・T・S」(手軽に・使いやすい・進捗レビュー)をコンセプトにBNCにご提案いただき進捗レビューをつくっていただきました。
導入初年度ということで、まずは3カ月に1回のペースで進捗レビューの利用を促しました。1on1を上手に回すために進捗レビューを利用する場面もあったと思います。2022年3月評価時のアンケート結果を見ると、上司と部下の対話頻度が全社でやや向上しているようですので、明らかにプラスの効果は見えます。
導入した当初は現場からの抵抗がありましたが、今は浸透しており、社員のアンケートのなかには「進捗レビューのおかげで期末に年間通して振り返ることができるようになり評価がしやすくなった」という言葉もありました。将来的には毎月でも進捗レビューを利用できるようにしたいと考えています。
― これから挑戦したい取り組みはありますか。
当社では人事異動が発生する際に、異動先の上司が役割職務記述書を記載して異動してくる部下に提示するという運用を行っております。しかし、充分に活用しているとは言えない状況でした。
しかし、あらためて考えてみると、新しい組織のなかで果たす役割をしっかり認識しておくことは、1年のサイクルで回す人事評価の大元と捉えることができます。それであれば、貢献度評価と個人能力評価表の上位概念的なものとして役割職務記述書を意識してもらうよう、BNCに相談をしてシステム対応いたしました。
役割職務記述書は3~5年ぐらいの異動ローテーションのために作成されますので、効果はすぐにはわかりませんが、今後一層の活用が進めばと期待しています。
事業戦略を支える 人事評価ワークフローシステム
― 今後の展開をお聞かせください。
ますます環境変化が加速化するなか、会社がその流れを捉えるためには、事業ポートフォリオをダイナミックに変化させる必要があります。それを実現するため、求められる施策のひとつが人材の機動的な活用です。縦横無尽に人が動く組織づくり、多様化・個別化への更なる対応などは、これから一層欠かせないミッションになっていくと考えています。これにともない、制度改革も随時必要になってきますから、これまでと同様に人事評価ワークフローシステムもブラッシュアップを続けていきます。
BNCにはお手数をおかけしますが、引き続きよろしくお願いいたします。
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